AIエージェントとは。チャット型AIとの違いと、業務に導入する手順
執筆: 株式会社センダー(AI・データを活用したマーケティング支援)
AIエージェントとは、目的を与えると、手順の分解・道具の使用・実行までを自分で進めるAIのことです。従来のチャット型AIが「聞かれたことに答える」のに対し、AIエージェントは「決められた仕事を最後まで進める」点が異なります。業務に導入するときは、任せる範囲を1つに絞り、人が確認する箇所を設計に組み込んでから広げます。2026年8月時点の情報です。
ラッコキーワードのデータ(2026年8月時点)をもとにした当社調査では、「AIエージェント」の月間検索数は40,500でした。関連する語では「aiエージェント 構築」が170(12か月で+51%)、「aiエージェント 導入支援」が70(同+137%)で、言葉の認知に対して、導入の実務を調べる段階に入った人はまだ少ない状態です。
チャット型AIとの4つの違い
| チャット型AI | AIエージェント | |
|---|---|---|
| きっかけ | 人が質問を入力したとき | 人の入力に加えて、時刻・データの変化・受信などの決まったきっかけ |
| 進め方 | 1回の応答で完結 | 目的から手順を分解し、複数の工程を続けて実行 |
| 外部との接続 | 基本的に文章のやり取りのみ | ファイル・表計算・社内システム・外部サービスを読み書きする |
| 成果物 | 画面上の回答 | ファイルの更新、投稿、通知、レポートなど、業務で使われる形 |
違いを一言でいえば、人が毎回指示を出さなくても、決まったきっかけで動いて成果物まで届くという点です。この性質があるため、繰り返し発生する業務との相性が良くなります。
「自動化」との違い
決まった処理を自動で実行する仕組み自体は以前からあります。従来の自動化との違いは、手順が完全に固定されていなくても処理を進められる点です。たとえば、書式の揺れた議事録から決定事項を抜き出す、といった処理は、条件分岐だけで書き切るのが難しく、従来の自動化では扱いにくい領域でした。
一方で、この柔軟さは想定外の出力が起こり得ることの裏返しでもあります。後述する「人が確認する箇所」の設計が必要になるのは、このためです。
業務で任せられる処理の型
実際に稼働させやすいのは、次の4つの型です。
- 決まった時刻に情報を集めて、決まった形にまとめる: 日次・週次・月次のレポート生成、順位や在庫の定期確認
- データの変化を検知して知らせる: サイトの表示崩れ、数値の急な変動、更新の停止を検知して通知する
- 入ってきた文章を分類して振り分ける: 問い合わせメールの内容による分類、議事録からのタスク抽出
- 1つの情報を複数の場所へ展開する: サイトの新着情報を各種の情報発信先へ投稿する
当社では、この型のうち1と4を自社とクライアントの業務で運用しています。GA4とSearch Consoleのデータを自動取得して月次のアクセス解析レポートを生成する仕組みと、サイトに新しい事例が追加されると該当する県の店舗情報ページへ投稿する仕組み(10県で運用)です。詳しくは実績にまとめています。
向いていない業務
次の条件に当てはまる業務は、先に整理してから検討します。
- 判断の基準が言語化されておらず、担当者ごとに結論が変わる
- 間違えたときの影響が大きく、後から取り消せない(送金、対外的な確定連絡など)
- 扱うデータの取り扱い可否が社内で決まっていない
3つ目は特に見落とされます。顧客情報や取引データをAIに渡してよいかが決まっていないまま進めると、稼働の直前で止まります。ルールの決め方は社内のAI利用規程・ガイドラインの作り方で解説しています。
導入の5ステップ
ステップ1. 扱ってよいデータの線引きを決める
どのデータをAIに渡してよいか、どこに保存されるか、誰が使えるかを先に決めます。この線引きがないと、対象業務を選ぶ段階で判断が止まります。
ステップ2. 対象業務を1つに絞る
繰り返しの頻度が高く、手順を書き出せて、関係するシステムと承認者が少ない業務を1つ選びます。当社では「起点から成果物までが一連につながる業務プロセス1本」を1業務と数え、連携する外部システムは2つまで、成果物の型は1種類、承認者は1名までを目安にしています。この条件を超える場合は2つに分けます。
範囲を絞る理由は、あとから工数と費用が膨らむのを防ぐためです。業務の棚卸しと優先順位の付け方はAI導入の進め方で詳しく説明しています。
ステップ3. 人が確認する箇所を設計に組み込む
AIエージェントは想定外の出力をすることがあります。そのため、次のいずれかを設計に入れます。
- 公開・送信の前に人が承認する: 対外的な発信を伴う処理では、最終確認を人が行う
- 結果を通知して、事後に確認できるようにする: 内部向けの処理では、実行結果を担当者へ通知する
- 異常値で止める: 想定の範囲を超えた出力が出たら、実行せずに知らせる
どれを選ぶかは、間違えたときの影響の大きさで決めます。影響が外部に及ぶ処理ほど、事前の承認を挟みます。
ステップ4. 本番で動く状態まで作り、検収の基準を先に決める
作り込みは、本番で動く状態まで進めます。当社の標準では、この工程は6〜8週間です。検収は「事前に合意したテストケースを通過したら完了」と決めておきます。基準を先に決めておくと、完成の判断が人の感覚に依存しません。
ステップ5. 運用しながら、次の業務へ広げる
稼働後は、実際に動いているか、想定外の出力が起きていないかを定期的に確認します。当社の標準では、初期は週1回45分の進捗確認、運用開始後は月2回60分の改善会議です。1業務が安定してから、ステップ2に戻って次の業務に広げます。
導入前に確認しておくこと
誰が引き継ぐかを決める
作った担当者が異動・退職すると、仕組みが止まることがあります。設定内容と手順を記録に残し、複数人が操作できる状態にしておきます。
効果の測り方を先に決める
削減された時間を測るには、導入前の作業時間を記録しておく必要があります。稼働後に「速くなった気がする」としか言えない状態では、次の投資の判断ができません。
発注する場合の確認項目
外部に依頼する場合は、対象業務の範囲、検収の基準、稼働後の保守範囲、作った仕組みの権利と設置場所を契約前に確認します。確認すべき項目はAIエージェント導入支援会社の選び方と費用の見方にまとめています。
稼働後に確認する4つの数値
作って終わりにせず、次の4つを定期的に確認します。数値を記録していないと、止めるか続けるかの判断ができません。
| 数値 | 見る理由 |
|---|---|
| 実行回数と成功回数 | 想定どおりのきっかけで動いているか。動いていない日が続いていないか |
| 人が修正した回数 | 出力をそのまま使えているか。修正が多い場合は指示か判断基準に原因がある |
| 対象業務の作業時間 | 導入前の実測値と比較する。削減できていなければ対象選定を見直す |
| 想定外の出力が出た回数 | 確認箇所の設計が機能しているか |
このうち3番目は、導入前に作業時間を測っていないと出せません。着手前の実測は、あとから取り戻せない数値です。
社内に必要な体制
外部に実装を任せる場合でも、次の役割は社内に残ります。
対象業務を決める人
現場の負担と優先度を判断できる人です。技術の知識は不要で、どの業務が繰り返されているか、どこで手が止まるかを把握していることが条件になります。
データの取り扱いを決める人
どの情報をAIに渡してよいかを判断します。情報管理の責任は外部に委託できないため、この役割は必ず社内に置きます。
運用を引き継ぐ人
稼働後に、動作の確認と簡単な調整を行います。**この人が決まっていない仕組みは、作った人が異動した時点で止まります。**引き継ぎ先を決め、操作手順を文書に残し、2人以上が触れる状態にしておきます。
3つを1人が兼ねても構いませんが、決まっていない役割があると、その工程で止まります。
費用の考え方
金額は対象業務の数、保守の範囲、成果物の置き場所で変わります。判断は他社の相場ではなく、対象業務の現在のコストと回収期間で行います。内訳の項目と計算方法はAI導入の費用の考え方にまとめています。
よくある質問
AIエージェントとRPAは何が違いますか。
RPAは、あらかじめ記録した画面操作や手順をそのまま再現する仕組みです。手順が固定されているため、画面の変更や書式の揺れに弱い一方、動作は毎回同じで予測しやすいという特徴があります。AIエージェントは手順を自分で組み立てるため、揺れのある入力を扱えますが、出力が毎回同じとは限りません。どちらが適するかは、扱う入力の揺れの大きさで決まります。
社内にエンジニアがいなくても導入できますか。
導入自体は可能です。ただし、対象業務の選定、扱ってよいデータの線引き、検収の基準づくりは社内で決める必要があります。実装を外部に任せる場合でも、この3つは社内の判断事項として残ります。
動かしてみて、想定と違う結果が出たらどうしますか。
まず、人が確認する箇所で止まる設計になっているかを確認します。そのうえで、指示の書き方、渡すデータの範囲、判断基準の明文化のどこに原因があるかを切り分けます。多くの場合、原因は判断基準が言葉になっていないことにあります。
まとめ
- AIエージェントは、目的を与えると手順の分解から実行までを自分で進めるAI。チャット型AIとの違いは、きっかけ・進め方・外部との接続・成果物の4点
- 稼働させやすいのは、定期的なレポート生成、変化の検知と通知、文章の分類と振り分け、複数箇所への展開の4つの型
- 導入は、扱ってよいデータの線引き → 対象業務を1つに絞る → 人が確認する箇所の設計 → 本番稼働と検収 → 運用と拡大、の順で進める
- 判断基準が言語化されていない業務、取り消せない処理、データの取り扱いが未決の業務は、先に整理してから検討する
- 効果を測るには、導入前の作業時間を記録しておく必要がある
自社で進める場合は、扱ってよいデータの線引きから着手してください。対象業務の選定や、人が確認する箇所の設計から相談したい場合は、お問い合わせからご相談いただけます。支援内容はAIエージェント導入・構築支援にまとめています。



