AI導入に使える補助金・助成金。制度の種類と申請の進め方

執筆: 株式会社センダー(AI・データを活用したマーケティング支援)

AI導入に使える公的支援は、大きく3つの系統に分かれます。①ITツール・AIツールの導入費用への補助、②省力化・自動化のための投資への補助、③AI研修など人材育成への助成です。自社の目的がツール導入なのか、業務の仕組みづくりなのか、社員教育なのかで、使える制度が変わります。

「AI導入 補助金」の月間検索数は2,900回で、12ヶ月で2倍超に増えています(ラッコキーワードのデータ〈2026年8月時点〉をもとにした当社調査)。制度への関心が高まっている一方、補助金は申請しても採択されるとは限らず、制度の名称・要件・時期は年度ごとに変わります。この記事では、制度の全体像と、申請前に社内で決めておくべきことを整理します。2026年8月時点の情報です。

補助金と助成金の違い

はじめに用語を整理します。

  • 補助金: 予算と採択件数に上限があり、申請内容が審査されます。要件を満たしても、採択されるとは限りません。
  • 助成金: 主に厚生労働省系の制度で、要件を満たせば原則受給できるものが多くあります。人材育成・雇用関連の制度がこちらに含まれます。

いずれも原則として**後払い(精算払い)**です。先に自社で支払い、実施報告のあとに入金されるため、一時的な資金繰りは自社で確保する必要があります。

AI導入に使える制度の3つの系統

個別の制度名・補助率・上限額は年度や公募回で変わるため、ここでは系統と考え方を示します。数値・要件は必ず最新の公募要領で確認してください(以下は各制度の公表情報をもとにした当社調査〈2026年8月時点〉です)。

1. ITツール・AIツールの導入費用への補助

会計・受発注・顧客管理などの業務ソフトやAIツールの導入費用を対象とする系統です。国の制度としては、IT導入補助金の流れをくむ制度(2026年度は「デジタル化・AI導入補助金」の名称)が代表的です。

  • 対象になりやすい費用: ソフトウェア購入費、クラウドサービスの利用料(一定期間分)、導入設定・研修の費用
  • 特徴: 登録されたツール・支援事業者を通じて申請する方式が中心
  • 補助率の目安: 2分の1前後(枠・要件により異なる)

2. 省力化・自動化への投資に対する補助

人手不足への対応として、業務の省力化・自動化に向けた設備・システム投資を対象とする系統です。中小企業向けの省力化投資への補助制度が該当します。

  • 対象になりやすい費用: 業務プロセスを自動化するシステムの構築費、機器・設備費
  • 特徴: 「どの業務の、どれだけの時間を削減するか」の計画と数値根拠が求められる
  • 補助率の目安: 2分の1〜3分の2程度(企業規模・要件により異なる)

3. AI研修・人材育成への助成

社員にAIの使い方を教育する研修費用を対象とする系統です。人材開発支援助成金など、厚生労働省系の制度が該当します。

  • 対象になりやすい費用: 研修の実施費用、研修期間中の賃金の一部
  • 特徴: 事前の計画届が必要な制度が多い。要件を満たせば受給できる可能性が補助金より高い
  • 助成率の目安: 経費の2分の1〜4分の3程度(制度・コースにより異なる)

対象になりやすい費用・なりにくい費用

制度により異なりますが、共通する傾向があります。

対象になりやすい対象になりにくい
ソフトウェア・AIツールの導入費既存業務の人件費
システムの構築・設定費交付決定前に発注・契約した費用
クラウド利用料(一定期間分)汎用品(パソコン等)単体の購入
導入時の研修費効果を数値で示せない費用

とくに注意が必要なのは交付決定前の発注です。多くの制度で、交付決定より前に契約・発注した費用は対象外になります。導入を急ぐあまり先に契約してしまうと、補助を受けられなくなる場合があります。

申請前に社内で決めておくこと

制度選びより先に、次の3点を決めておくと、申請書類の作成と審査対応が進めやすくなります。

  1. どの業務を対象にするか: 「AIを導入する」ではなく「どの業務の、どの工程を自動化するか」まで絞り込みます。絞り込みの方法はAI導入の進め方で解説しています。
  2. 効果の数値根拠: その業務に現在かかっている時間を金額に換算し、導入後にどれだけ削減される見込みかを示せるようにします。省力化系の制度では、この数値根拠が計画の中心になります。
  3. スケジュール: 公募の締切、交付決定の時期、事業の実施期間、報告の期限を逆算します。後払いのため、入金までの資金繰りも確認します。

当社では、業務の棚卸しと時間の金額換算を行うAI業務診断(3週間)を提供しており、この結果がそのまま申請の数値根拠になります。詳細はAI Growth Opsをご覧ください。

申請の進め方(5ステップ)

  1. 制度の確認: 自社の目的(ツール導入・業務自動化・研修)に合う系統を選び、現在公募中の制度と締切を公式情報で確認します。
  2. 業務の棚卸しと数値根拠づくり: 対象業務を決め、現状の時間・コストと削減見込みを数値にします。
  3. 要件の整理と見積の取得: 制度の要件(賃上げ要件・実施体制など)を確認し、導入するツール・システムの見積を取得します。
  4. 申請: 制度によっては、登録された支援事業者を通じた申請が必要です。当社では、補助金の利用を前提とした企画づくり・要件整理・見積作成までを行い、申請の実務は提携先と連携して進めます。
  5. 採択後の実施と報告: 交付決定後に発注・導入し、実施報告を提出します。報告が受理されてから入金されます。

注意点

  • 採択されるとは限りません。 補助金は審査があり、不採択の場合もあります。補助ありきの資金計画ではなく、「採択されれば負担が下がる」前提で計画することが必要です。
  • 後払いが基本です。 実施期間中の支払いは自社で立て替えます。
  • 交付決定前の発注は原則対象外です。 スケジュールは交付決定を起点に組みます。
  • 要件は年度で変わります。 賃上げ要件の追加・補助率の変更・名称の変更が毎年のように行われています。この記事の内容も、申請時点の公募要領で必ず確認してください。

よくある質問

採択されなかった場合はどうなりますか

費用は全額自己負担になります。このため、補助がなくても投資回収が見込める業務から着手する進め方が安全です。時間の金額換算で回収見込みを事前に確かめておくと、採択の有無にかかわらず判断できます。

いつ申請すればよいですか

多くの補助金は年に数回の公募締切があります。準備(業務の棚卸し・見積取得・書類作成)に1〜2ヶ月かかることを見込み、狙う締切から逆算して着手します。研修系の助成金は、研修開始前の計画届が必要な制度が多いため、研修日程が決まる前に確認が必要です。

小規模な会社でも使えますか

多くの制度が中小企業・小規模事業者を対象にしています。ただし制度ごとに従業員数・資本金の要件が定められているため、自社が対象に含まれるかを公募要領で確認してください。

まとめ

  • AI導入に使える公的支援は、ツール導入への補助・省力化投資への補助・人材育成への助成の3系統に分かれます
  • 原則後払いで、交付決定前の発注は対象外。採択されるとは限らないため、補助ありきの計画にしないことが必要です
  • 申請の中心になるのは「どの業務を、どれだけ削減するか」の数値根拠です。業務の棚卸しと金額換算を先に行うと、制度選びも申請書類も進めやすくなります

自社で進める場合は、対象業務の絞り込みから着手してください。手順はAI導入の進め方にまとめています。どの制度が使えそうか、どの業務から始めるべきかを相談したい場合は、お問い合わせからご相談ください。業務のAI化の支援内容はAI Growth Opsで紹介しています。

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